【3】『大前研一のIT時評 ~一歩進んだ人のためのデジタル情報?』
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【3】『 大前研一のIT時評 ~一歩進んだ人のためのデジタル情報? 』
※本内容は、夕刊フジ6月25日号に寄稿したものを編集したものです
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■テーマ1 スマートフォンシェア争奪戦 ヤフーとノキアの運命は・・・
■テーマ2 まだまだ続くアップル旋風
■テーマ3 5年後は・・・?ソニー電子書籍端末「リーダー」
■テーマ4「商い無限」のiPad
■テーマ1 スマートフォンシェア争奪戦 ヤフーとノキアの運命は・・・
世界最大の携帯電話メーカ、フィンランドのノキアと米ヤフーは携帯電話
を中心とするネットサービス事業を統合すると発表した。スマートフォン
が世界的に普及するなか、携帯電話のサービスを共同で拡大し、この分野
でシェアを伸ばしているアップルやグーグルに対抗する。
アメリカで見るかぎりではアップルとグーグルで決まりという状況です。
そのことに携帯世界1位のノキアは焦っており、同じく焦っているヤフー
と組んでネットサービスをやろうというのでしょう。
アップルの戦略はアプリケーションを売る場を一般に解放してどんどん
作ってもらい、その仕組みに乗っかってビジネスを進めていくというもの
です。いわゆるクラウドソーシングの応用ですね。公開されているアプリ
はなかなか気が利いていて、iPhoneのカメラで撮った画像をブルートゥー
ス接続でiPadに転送し、iPad側に写真を収納するといったアプリもありま
す。写真はiPhoneより画像の大きいiPadのほうが見やすいですからね。
そうしたアプリがゴマンとそろっているのがアップルの世界です。そんな
スピード感のある世界に、自社で製品を開発して販売するビジネスを続け
てきたノキアが果たして追いつけるのでしょうか。
グーグルもアップルと似たようなところがあり、両者のスピード感を日々
感じている私としては、ノキアとヤフーに「グッド・ラック」という言葉
を贈るしかありませんね。
■テーマ2 まだまだ続くアップル旋風
米ナスダック市場で、アップルの株式時価総額がマイクロソフトを抜いて
情報通信業界で1位、全体で2位になった。時価総額は5月26日の終値ベース
で2213億ドル(約20兆円)。
スティーブ・ジョブズCEOひとりで、ここまで持ってきたと言っても過言
ではないでしょう。マイクロソフトはiPhoneやiPadなどのアップル旋風で
上値が重くなっているため、アップルに抜かれてしまいました。
iPadのビジネスは無限にあると思います。本体は少し重くて滑りやすい
ので落としてしまう人が後を絶ちません。専用のホルダーに入れると少し
マシですし、立てて置くこともできます。ブルートゥースでキーボードと
無線接続できますし、画面上のソフトキーボードもそれほど違和感はあり
ません。iPhoneと同じく、ユーザーが作ったアプリケーションも相当数
あります。私はiPhoneよりもiPadのほうがビジネス的に成功するのでは
ないか、と思いますね。
いまのところ電話はできませんが、マイクもスピーカーもありますので、
いずれ誰かがスカイプで電話ができるアプリケーションを開発するのでは
ないかと思います。
■テーマ3 5年後は・・・?ソニー電子書籍端末「リーダー」
ソニーは同社の電子書籍端末「リーダー」の新しいモデルを日本国内で年内
に発売すると発表した。KDDIも専用端末を年度内に開発する方針で、両社
は凸版印刷、朝日新聞社を入れた4社で電子書籍配信に関する事業企画会社
を設立する。
こうした取り組みは、5年後には大体うまくいっていないものです。そもそ
も、電子書籍でアマゾンのキンドルとiPadの牙城を崩すのはかなり難しいと
思います。
キンドルで米国を席巻しているアマゾンでさえ、iPadやiPhone向けにキンド
ルのソフトを公開しています。アマゾンは、扱う電子書籍をキンドルだけに
配信するのではなく、対象ハードをiPadにも広げているのです。キンドルで
あろうがiPadであろうが、書籍が売れれば売り上げの一部はアマゾンに入る
のですから、ハードウェアでiPadと勝負するよりも自分たちはコンテンツ
配信業者だと割り切って「実」を取る戦略なのでしょう。
日本の企業が連合する取り組みは、たいていただし書きが多すぎ、うまく
いった試しがありません。日本における電子書籍化の問題点は、書籍取次の
東販と日販が“妨害”しているというところにあります。出版社が遠慮して
いる、というほうがあたっているのかもしれません。東・日販(新聞社にと
っては販売店)をなくしてしまうというほどの意気込みと勇気があるかどう
か、が成功のカギでしょう。
■テーマ4「商い無限」のiPad
光学分析機器開発のスカラはiPadやiPhoneにワイヤレス接続できるマイクロ
スコープ「エアマイクロ」を7月7日から発売する。アプリを起動してエアマ
イクロのレンズ部分を顔にあてると、50倍に拡大された肌が画面に映り、肌
のきめ細かさやしみなどの状態をチェックできるという。価格は4万5150円。
知って何になるの?という感じですが、私はそのためにこのニュースを取り
上げたのではなくて、iPadというのは前述したように「商い無限」でいろいろ
なことができるということをお伝えしたいのです。
私が経営しているビジネス・ブレークスルーでも。iPadを日本発売前に入手し、
授業に使うためのアプリ開発などを始め、今週からリリースしています。
とにかくiPadでは、いろいろなことができます。
任天堂のWiiのように本体の
加速度を感知するセンサーなど、いろいろな機能が入っており開発するのも
非常に楽しいデバイスです。このエアマイクロもiPadの機能を生かした製品の
ひとつですが、えくぼではなくアバタでしたということが分かった後に何を
してくれるのか、その解決方法まで提示してくれることを望みたいですね。
【3】『 大前研一のIT時評 ~一歩進んだ人のためのデジタル情報? 』
※本内容は、夕刊フジ6月25日号に寄稿したものを編集したものです
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■テーマ1 スマートフォンシェア争奪戦 ヤフーとノキアの運命は・・・
■テーマ2 まだまだ続くアップル旋風
■テーマ3 5年後は・・・?ソニー電子書籍端末「リーダー」
■テーマ4「商い無限」のiPad
■テーマ1 スマートフォンシェア争奪戦 ヤフーとノキアの運命は・・・
世界最大の携帯電話メーカ、フィンランドのノキアと米ヤフーは携帯電話
を中心とするネットサービス事業を統合すると発表した。スマートフォン
が世界的に普及するなか、携帯電話のサービスを共同で拡大し、この分野
でシェアを伸ばしているアップルやグーグルに対抗する。
アメリカで見るかぎりではアップルとグーグルで決まりという状況です。
そのことに携帯世界1位のノキアは焦っており、同じく焦っているヤフー
と組んでネットサービスをやろうというのでしょう。
アップルの戦略はアプリケーションを売る場を一般に解放してどんどん
作ってもらい、その仕組みに乗っかってビジネスを進めていくというもの
です。いわゆるクラウドソーシングの応用ですね。公開されているアプリ
はなかなか気が利いていて、iPhoneのカメラで撮った画像をブルートゥー
ス接続でiPadに転送し、iPad側に写真を収納するといったアプリもありま
す。写真はiPhoneより画像の大きいiPadのほうが見やすいですからね。
そうしたアプリがゴマンとそろっているのがアップルの世界です。そんな
スピード感のある世界に、自社で製品を開発して販売するビジネスを続け
てきたノキアが果たして追いつけるのでしょうか。
グーグルもアップルと似たようなところがあり、両者のスピード感を日々
感じている私としては、ノキアとヤフーに「グッド・ラック」という言葉
を贈るしかありませんね。
■テーマ2 まだまだ続くアップル旋風
米ナスダック市場で、アップルの株式時価総額がマイクロソフトを抜いて
情報通信業界で1位、全体で2位になった。時価総額は5月26日の終値ベース
で2213億ドル(約20兆円)。
スティーブ・ジョブズCEOひとりで、ここまで持ってきたと言っても過言
ではないでしょう。マイクロソフトはiPhoneやiPadなどのアップル旋風で
上値が重くなっているため、アップルに抜かれてしまいました。
iPadのビジネスは無限にあると思います。本体は少し重くて滑りやすい
ので落としてしまう人が後を絶ちません。専用のホルダーに入れると少し
マシですし、立てて置くこともできます。ブルートゥースでキーボードと
無線接続できますし、画面上のソフトキーボードもそれほど違和感はあり
ません。iPhoneと同じく、ユーザーが作ったアプリケーションも相当数
あります。私はiPhoneよりもiPadのほうがビジネス的に成功するのでは
ないか、と思いますね。
いまのところ電話はできませんが、マイクもスピーカーもありますので、
いずれ誰かがスカイプで電話ができるアプリケーションを開発するのでは
ないかと思います。
■テーマ3 5年後は・・・?ソニー電子書籍端末「リーダー」
ソニーは同社の電子書籍端末「リーダー」の新しいモデルを日本国内で年内
に発売すると発表した。KDDIも専用端末を年度内に開発する方針で、両社
は凸版印刷、朝日新聞社を入れた4社で電子書籍配信に関する事業企画会社
を設立する。
こうした取り組みは、5年後には大体うまくいっていないものです。そもそ
も、電子書籍でアマゾンのキンドルとiPadの牙城を崩すのはかなり難しいと
思います。
キンドルで米国を席巻しているアマゾンでさえ、iPadやiPhone向けにキンド
ルのソフトを公開しています。アマゾンは、扱う電子書籍をキンドルだけに
配信するのではなく、対象ハードをiPadにも広げているのです。キンドルで
あろうがiPadであろうが、書籍が売れれば売り上げの一部はアマゾンに入る
のですから、ハードウェアでiPadと勝負するよりも自分たちはコンテンツ
配信業者だと割り切って「実」を取る戦略なのでしょう。
日本の企業が連合する取り組みは、たいていただし書きが多すぎ、うまく
いった試しがありません。日本における電子書籍化の問題点は、書籍取次の
東販と日販が“妨害”しているというところにあります。出版社が遠慮して
いる、というほうがあたっているのかもしれません。東・日販(新聞社にと
っては販売店)をなくしてしまうというほどの意気込みと勇気があるかどう
か、が成功のカギでしょう。
■テーマ4「商い無限」のiPad
光学分析機器開発のスカラはiPadやiPhoneにワイヤレス接続できるマイクロ
スコープ「エアマイクロ」を7月7日から発売する。アプリを起動してエアマ
イクロのレンズ部分を顔にあてると、50倍に拡大された肌が画面に映り、肌
のきめ細かさやしみなどの状態をチェックできるという。価格は4万5150円。
知って何になるの?という感じですが、私はそのためにこのニュースを取り
上げたのではなくて、iPadというのは前述したように「商い無限」でいろいろ
なことができるということをお伝えしたいのです。
私が経営しているビジネス・ブレークスルーでも。iPadを日本発売前に入手し、
授業に使うためのアプリ開発などを始め、今週からリリースしています。
とにかくiPadでは、いろいろなことができます。
任天堂のWiiのように本体の
加速度を感知するセンサーなど、いろいろな機能が入っており開発するのも
非常に楽しいデバイスです。このエアマイクロもiPadの機能を生かした製品の
ひとつですが、えくぼではなくアバタでしたということが分かった後に何を
してくれるのか、その解決方法まで提示してくれることを望みたいですね。
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