大前研一最新提言!『大前研一特別講義 講義議事録(中編)』
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■大前研一最新提言
『 大前研一特別講義 講義議事録(中編)
~間違いだらけの中国脅威論。でかいアジアの活用法を知れ!』
※12月20日 アタッカーズ・ビジネススクール受講生向けの特別講義より
──────────────────────────────────
■中国の規模感
アジアはでかい。皆さんもまずは、中国の規模感を知るべきだな。
日本の鉄道は2万km。中国は8万kmで2020年までにあと4万km―日本の全鉄道の
2倍の線路を敷く計画がある。
次に高速道路。日本は7,666km、この間中国は6万kmの高速道路を造った。
中国は今も年間12,000kmの高速道路を造っている。これには大量のコンクリート
と鉄を使う。日本はかつて世界一の鉄鋼生産国だった。日本のピークは1億
2,000万トン。中国は5億トン。したがって世界でダントツの1位。
そして電話。日本は1億1,000万サブスクライバ。中国は6億3,000万サブスクラ
イバです。日本ばかりでなく米国も抜かれた。トップであるチャイナ・モバイル
は4億5000万件、その次のチャイナ・ユニコムは1億4,000万件。NTTドコモは
5,500万件。
しかも中国は、1年間のサブスクライバの上昇だけで、NTTドコモを抜いちゃ
うんだから。NTTドコモが毎年重なってんだよ。だから時価総額も半端じゃない。
17兆円。NTTドコモは5兆円。もしチャイナ・モバイルがM&Aを始めたら、台湾の
770社の全上場企業が1社で買えちゃうんだよ。
世界の時価総額ランキングには、トヨタが21位に出てくるだけで日本企業は一切
ない。かつてはトップ20に7社程日本企業が入っていたんだよ? 中国には巨大な
会社が沢山ある。時価総額も大きくなった。M&Aで、世界中の大企業を買える
ようになった。これはこの4~5年の新しい現象にすぎない。まだ中国は、大きな
伸びしろを残しているんだ。
去年までの中国はフェーズ1。
生産基地として安い労賃でモノを作り、世界に輸出してきた。
09年1月からはフェーズ2。
中国の国内市場は馬鹿でかい。これを制した者が勝つ。だからGMも、中国だけは
手放さなかったんだ。
その中国で活躍している日本の企業。成都ではイトーヨーカドー、上海周辺では
サントリー。そして広州のホンダや東風と提携した日産・・・この2社は相当強く
なり、60万台から100万台まで売れるようになってきた。
地場の企業も強くなっている。吉利汽車が高級車ブランド「ボルボ」を買った。
「ボルボ」はブランドもあるし、世界の販売網を持っているし、技術もある。
吉利汽車は、20年間の成長を買ったことになる。こういう会社は、いくつか出て
きていている。
中国はフェーズ2だ。
皆さんは中国に乗り込んで、がっぽり商売をするんだな。
例えば、日本でラーメンのチャンピオン企業と言えば日清食品。ところが中国に
行ってみると、サンヨー食品のほうがでかい。理由は簡単。サンヨー食品は、
大連にラーメン工場を造ったがうまく行かなかった。そこにちょうど頂新という
台湾企業が、工場を欲しいと言ってきた。但し値段が合わない。そこでサンヨー
食品は、頂新の株を1/3もらった。そしたら、頂新が「康師父(カンシーフ)」と
いうラーメン大成長。今や50億食だよ。
だから日清食品が、自力で中国を開拓しようが間にあわない。この「康師父」の
販売店は20万店。中国で販売経路を作ろうと思ったら、20万店を回らないと
いけない。
そしたら他の食品メーカーが頂新に、うちのも販売してください、と言って業務
提携を結んだ。今は色んな企業が、頂新に業務提携を申し出ている。
頂新という台湾の小さな会社が、中国に行って大成功した
実は日本企業でも、向こうで一旗揚げている会社が結構あるんだ。
例えば、初めて上海で上場した日本企業で、マツオカ(中国茉織華)という会社。
アパレル企業で、日本での競争力はほとんど無い。そこで上海郊外の浙江省に、
日中合弁で縫製工場を作った。そしたら日本の色んなメーカーから発注が入って、
大成功。
今や中国最大のアパレル会社になっちゃったよ。
マブチモーターもそうで、今は売上高のほとんどが中国だ。
義経伝説のように、気が付いたら向こうでチャンピオンになっている企業は多い。
そんな会社は、これから先も強いよ。
このように我々は、中国の活用法が分かってきた。
中国では、外資として商売をやると色々問題があるが、中国と一体化してやり
きると、中国人は愛国心が強い国民性があるから、どんどん応援してくれる。
日中合弁で成功したマツオカはその好例だ。マツオカが、アパレルの次に印刷事業
を始めたら、なんと中国政府から注文が入っちゃった。皆さんは海外に行く時に、
出入国カードを書くでしょ? 実は中国の出入国カードは、マツオカが印刷して
いるんだ。だから中国は面白いんだな。
■市場は中国だけじゃない!見逃せない5兆ドルの在り処
新興国が「貧乏な国」という考えは、ちょっと違う。
世界には、1日2ドルしか稼げない貧困層が40億人いる。でもこれは裏を返すと、
5兆ドルの需要が隠されていることになるんだ。
C.K.プラハラードというミシガン大学の教授が
『Wealth at the Bottom of the Pyramid(邦題:ネクスト・マーケット)』という
本を出した。
1日2ドルしか稼げない世界中の40億人が、実は購買する力を持っていて、豊かに
なりたいと願って生活をしている。そこをターゲットにした商売がインドで
生まれてきていて、その事例をプラハラード教授が紹介しているんだ。
このBOP(Bottom of the Pyramid)のビジネスで有名なのが、96年にノーベル平和賞
を受賞したグラミン銀行のムハマド・ユヌス。バングラデシュで、貧しい人達に
無担保で小額のお金(マイクロファイナンス)を貸し出している。同様にインドで
成功しているのが、ICICI銀行だ。
他では、ユニ・リーバが、インドの農村で女性達を組織して衛生環境の改善活動を
行った。水をろ過する装置を提供して、キレイな水で歯磨きやシャンプーをして
もらうんだ。歯磨きやシャンプーは一袋ずつばら売りする。小さいけれども
積み重ねれば山となる、そういう商売だ。
次に中間所得層。ここでは、世帯可処分所得5,001ドル以上3万5,000ドル以下を
指すけれども、実は中国では4億4,000 万人がこの層だ。十分な購買力を持っている。
インドは2億1,000万人。インドネシアは8,000万人。
日本は、全人口で1億2,000万人しかいないんだから。
日本で勝負をするのか、それとも国民の平均所得は低いけれども、中間所得層だけ
でも結構なボリュームがある中国やインド、インドネシアを狙うのか。
これもひとつの商売のやり方。
BOPをターゲットにする選択肢もある。ピラミッドの底辺で商売ができる時代に
なった。BOPで成功すると、世界には同じ層が40億人いる。どこか1カ国で成功すれば、
次のターゲットは全世界の40億人だ。これはでかいぜ。
皆さんが、もし日本で苦労して安売りの対象になるのなら、中国や新興国を狙う
ことも勧めるね。そして成功するためには、インサイダーになりきることが重要だ。
10年、20年、骨を埋めるつもりで行きなさい。
この期に及んで日本では逆の現象が起きている。
日本の若い人たちは海外赴任を拒否する。僕らの頃に比べると海外に対して、
うんと消極的になっているようだ。僕らの頃は、拒否するチョイスなんて無かった。
皆が海外での成功を目指したんだ。
トヨタが米国に進出した当時は、GMとトヨタの間には、業績規模で20倍もの差が
あった。商品力も弱く、日本車の弱々しい加速では、米国のハイウェイにすら
乗れない。そんな頃だったんだ。でもトヨタは米国に乗り込んだ。
いずれにしても皆さんは、中国や新興国をうまく活用することを考えてくれ。
■大前研一最新提言
『 大前研一特別講義 講義議事録(中編)
~間違いだらけの中国脅威論。でかいアジアの活用法を知れ!』
※12月20日 アタッカーズ・ビジネススクール受講生向けの特別講義より
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■中国の規模感
アジアはでかい。皆さんもまずは、中国の規模感を知るべきだな。
日本の鉄道は2万km。中国は8万kmで2020年までにあと4万km―日本の全鉄道の
2倍の線路を敷く計画がある。
次に高速道路。日本は7,666km、この間中国は6万kmの高速道路を造った。
中国は今も年間12,000kmの高速道路を造っている。これには大量のコンクリート
と鉄を使う。日本はかつて世界一の鉄鋼生産国だった。日本のピークは1億
2,000万トン。中国は5億トン。したがって世界でダントツの1位。
そして電話。日本は1億1,000万サブスクライバ。中国は6億3,000万サブスクラ
イバです。日本ばかりでなく米国も抜かれた。トップであるチャイナ・モバイル
は4億5000万件、その次のチャイナ・ユニコムは1億4,000万件。NTTドコモは
5,500万件。
しかも中国は、1年間のサブスクライバの上昇だけで、NTTドコモを抜いちゃ
うんだから。NTTドコモが毎年重なってんだよ。だから時価総額も半端じゃない。
17兆円。NTTドコモは5兆円。もしチャイナ・モバイルがM&Aを始めたら、台湾の
770社の全上場企業が1社で買えちゃうんだよ。
世界の時価総額ランキングには、トヨタが21位に出てくるだけで日本企業は一切
ない。かつてはトップ20に7社程日本企業が入っていたんだよ? 中国には巨大な
会社が沢山ある。時価総額も大きくなった。M&Aで、世界中の大企業を買える
ようになった。これはこの4~5年の新しい現象にすぎない。まだ中国は、大きな
伸びしろを残しているんだ。
去年までの中国はフェーズ1。
生産基地として安い労賃でモノを作り、世界に輸出してきた。
09年1月からはフェーズ2。
中国の国内市場は馬鹿でかい。これを制した者が勝つ。だからGMも、中国だけは
手放さなかったんだ。
その中国で活躍している日本の企業。成都ではイトーヨーカドー、上海周辺では
サントリー。そして広州のホンダや東風と提携した日産・・・この2社は相当強く
なり、60万台から100万台まで売れるようになってきた。
地場の企業も強くなっている。吉利汽車が高級車ブランド「ボルボ」を買った。
「ボルボ」はブランドもあるし、世界の販売網を持っているし、技術もある。
吉利汽車は、20年間の成長を買ったことになる。こういう会社は、いくつか出て
きていている。
中国はフェーズ2だ。
皆さんは中国に乗り込んで、がっぽり商売をするんだな。
例えば、日本でラーメンのチャンピオン企業と言えば日清食品。ところが中国に
行ってみると、サンヨー食品のほうがでかい。理由は簡単。サンヨー食品は、
大連にラーメン工場を造ったがうまく行かなかった。そこにちょうど頂新という
台湾企業が、工場を欲しいと言ってきた。但し値段が合わない。そこでサンヨー
食品は、頂新の株を1/3もらった。そしたら、頂新が「康師父(カンシーフ)」と
いうラーメン大成長。今や50億食だよ。
だから日清食品が、自力で中国を開拓しようが間にあわない。この「康師父」の
販売店は20万店。中国で販売経路を作ろうと思ったら、20万店を回らないと
いけない。
そしたら他の食品メーカーが頂新に、うちのも販売してください、と言って業務
提携を結んだ。今は色んな企業が、頂新に業務提携を申し出ている。
頂新という台湾の小さな会社が、中国に行って大成功した
実は日本企業でも、向こうで一旗揚げている会社が結構あるんだ。
例えば、初めて上海で上場した日本企業で、マツオカ(中国茉織華)という会社。
アパレル企業で、日本での競争力はほとんど無い。そこで上海郊外の浙江省に、
日中合弁で縫製工場を作った。そしたら日本の色んなメーカーから発注が入って、
大成功。
今や中国最大のアパレル会社になっちゃったよ。
マブチモーターもそうで、今は売上高のほとんどが中国だ。
義経伝説のように、気が付いたら向こうでチャンピオンになっている企業は多い。
そんな会社は、これから先も強いよ。
このように我々は、中国の活用法が分かってきた。
中国では、外資として商売をやると色々問題があるが、中国と一体化してやり
きると、中国人は愛国心が強い国民性があるから、どんどん応援してくれる。
日中合弁で成功したマツオカはその好例だ。マツオカが、アパレルの次に印刷事業
を始めたら、なんと中国政府から注文が入っちゃった。皆さんは海外に行く時に、
出入国カードを書くでしょ? 実は中国の出入国カードは、マツオカが印刷して
いるんだ。だから中国は面白いんだな。
■市場は中国だけじゃない!見逃せない5兆ドルの在り処
新興国が「貧乏な国」という考えは、ちょっと違う。
世界には、1日2ドルしか稼げない貧困層が40億人いる。でもこれは裏を返すと、
5兆ドルの需要が隠されていることになるんだ。
C.K.プラハラードというミシガン大学の教授が
『Wealth at the Bottom of the Pyramid(邦題:ネクスト・マーケット)』という
本を出した。
1日2ドルしか稼げない世界中の40億人が、実は購買する力を持っていて、豊かに
なりたいと願って生活をしている。そこをターゲットにした商売がインドで
生まれてきていて、その事例をプラハラード教授が紹介しているんだ。
このBOP(Bottom of the Pyramid)のビジネスで有名なのが、96年にノーベル平和賞
を受賞したグラミン銀行のムハマド・ユヌス。バングラデシュで、貧しい人達に
無担保で小額のお金(マイクロファイナンス)を貸し出している。同様にインドで
成功しているのが、ICICI銀行だ。
他では、ユニ・リーバが、インドの農村で女性達を組織して衛生環境の改善活動を
行った。水をろ過する装置を提供して、キレイな水で歯磨きやシャンプーをして
もらうんだ。歯磨きやシャンプーは一袋ずつばら売りする。小さいけれども
積み重ねれば山となる、そういう商売だ。
次に中間所得層。ここでは、世帯可処分所得5,001ドル以上3万5,000ドル以下を
指すけれども、実は中国では4億4,000 万人がこの層だ。十分な購買力を持っている。
インドは2億1,000万人。インドネシアは8,000万人。
日本は、全人口で1億2,000万人しかいないんだから。
日本で勝負をするのか、それとも国民の平均所得は低いけれども、中間所得層だけ
でも結構なボリュームがある中国やインド、インドネシアを狙うのか。
これもひとつの商売のやり方。
BOPをターゲットにする選択肢もある。ピラミッドの底辺で商売ができる時代に
なった。BOPで成功すると、世界には同じ層が40億人いる。どこか1カ国で成功すれば、
次のターゲットは全世界の40億人だ。これはでかいぜ。
皆さんが、もし日本で苦労して安売りの対象になるのなら、中国や新興国を狙う
ことも勧めるね。そして成功するためには、インサイダーになりきることが重要だ。
10年、20年、骨を埋めるつもりで行きなさい。
この期に及んで日本では逆の現象が起きている。
日本の若い人たちは海外赴任を拒否する。僕らの頃に比べると海外に対して、
うんと消極的になっているようだ。僕らの頃は、拒否するチョイスなんて無かった。
皆が海外での成功を目指したんだ。
トヨタが米国に進出した当時は、GMとトヨタの間には、業績規模で20倍もの差が
あった。商品力も弱く、日本車の弱々しい加速では、米国のハイウェイにすら
乗れない。そんな頃だったんだ。でもトヨタは米国に乗り込んだ。
いずれにしても皆さんは、中国や新興国をうまく活用することを考えてくれ。
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