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『大前研一の提言!【議論する力】』

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◆3◆ 大前研一の提言
     ~【議論する力】「傾聴」「質問」「説明」この三つの力を磨け
   ※THE21 11月号に大前研一が寄稿した記事を編集したものです。
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「世界で通用する人材」になってもらいたい。それには、なんと
いってもコミュニケーション力を身につけることが不可欠なので
ある。どんなに優れたスキルやアイデアをもっていたも、自分の
意思を伝え、人を動かしていくことができなければ、それを活か
すことはできない。

ただし、「I love you.」といわれたら、「So I love you,too.」
と即座にいえることがコミュニケーション力だと思ったら大間違
いだ。スピーチ、プレゼンテーション、会議、部下のマネジメン
ト、顧客の説得といったさまざまな局面で、正しい意思決定をし
、それを相手に伝え、合意形成を図り、なおかつ行動を起こさせ
る、これがビジネスにおけるコミュニケーション力なのである。
たんに英語で感情が伝えられるという程度では、まったく話にな
らないのだ。

アメリカ人なら誰でも出来る程度の英語なら、二束三文である。
結果を出せてナンボ、のコミュニケーションを日本語でも英語で
も同じ程度にできなくてはいけない。今回は、まずコミュニケー
ション力のなかでも、もっとも日本人が苦手とする「議論する力
」を採り上げてみたい。


●「議論を詰める力」が圧倒的に不足している

相手を言い負かし、自分の主張を通すことが議論の目的だと思っ
ている人がいるが、それは違う。議論の真の目的は、ある議題(
テーマ)について相互に主張と反論を交わしながら理解を深め合
い、合意に達することなのだ。

議論はまた、「問題解決のための最善解」を見出すために行うも
のである。だから議論の結果、当初の自分の主張と異なる結論に
至ったとしても、よりよい問題解決策が見つかったならば、その
議論は十分に成功したといえる。実際、日本マクドナルドの創業
者である故・藤田田氏は、日ごろから「議論のベストウェイはつ
ねに(自分と相手の主張とは)別のところにある」とよく口にし
ていた。

では、どうすればそのような議論ができるようになるのか。それ
を次に考えてみよう。

そもそも、「議論する力」というのは、
①相手の意見や主張に積極的に耳を傾け、それを正しく理解する
「聴く力」、
②相手の意見や主張に効果的な質問を投げかけ、曖昧な点や疑問
点をクリアにする「質問する力」、
③自分の主張や反論を相手に伝える「説明する力」
の三つから成る。いずれも重要だが、議論の基本はなんといって
も「聴く力」と「質問する力」だ。当然のことだが、相手の言っ
ていることを正確に理解できていなければ、相手の意見に同意な
のか反対なのかを述べることすらできない。

まずは相手の意見に耳を澄ます。そして、正しく理解できたかど
うかを確認するために、「要するに、あなたの言っていることは
こういうことですね」と、サマリーをつくって質問してみる。そ
れで間違いないとなったら、次は相手の主張を分解して、どこが
自分の主張と同じでどこが異なるかを頭のなかで整理する。その
うえで、「私とあなたの意見が一致しているのは、この点とこの
点です。反対に意見が異なるのは○○の部分です。○○の部分を
重点的に話し合いましょう」といって、より狭い範囲に限定して
お互いの合意点を探っていく。

このように、「相手の意見を整理・分解し、議論を詰めていく力
」は、議論を実りあるものにするうえで絶対に不可欠なもの。実
際、世界のリーダーやトップビジネスマンは、みんなこれがじつ
にうまい。私が十八年にわたってアドバイザーを務めたマハティ
ール前マレーシア首相も、「いま私たちの国はこういう問題を抱
えていて、そのうち大前さんの力を必要としているのはこの領域
です。なかでも、このポイントについて今日は意見を聞かせてく
ださい」というように、話を始める前にいつも議論のポイントが
明確になっていた。だから短い時間であっても、濃密な議論がで
きたのである。

一方、日本のビジネスマンには、この力が決定的に欠けていると
いわざるを得ない。政治家も同様だ。歴代首相でも、「議論を詰
める力」をもっていたのは中曽根康弘くらいではないだろうか。
中曽根氏は会うと必ず、「大前さん、この問題についてどう思い
ますか」と向こうから質問してきた。私がそれに対し答えると、
すかさずそれを自分でメモして、「要するに、大前さんのいって
いるのはこういうことですね」と確認する。そのとき私が、「ち
ょっと違います」というと、「どこが違いますか」とさらに質問
が飛んできて、自分が納得するまでこれを繰り返すのだ。

中曽根氏は、小泉純一郎氏など足許にも及ばない理解力の持ち主
だったが、それは日ごろから相手の意見を整理し、要約する訓練
を怠らなかったからに違いない。本誌の読者も、ぜひこの訓練を
習慣化しよう。新聞を読んでいるとき、会議で相手の話を聞いて
いるとき、ほかにもあらゆる場面で「ひと言で言うとどういうこ
となのか?」という問いを自分に発し続けるのだ。


ここまで。


続きは次号でご紹介いたします!
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