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【2】『大前研一の提言!「経済没落の日本」しか知らない若者に

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【2】『大前研一の提言!「経済没落の日本」しか知らない若者に
     もう一度「進取の精神」を』
    ※SAPIO 8月26日号に記載されたものを編集したものです
   (編集:松戸)
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どうも昨今の日本を論じようとすると、危機感をあおる話ばかりになって
少々気が引けるのだが、これも事実だからご容赦いただきたい。


日本経済が衰退を続けている間に、アジアでは中国、インド、インドネシア
など新興国の経済がいろいろな尺度で日本を凌駕するようになった。

“いくらなんでも言い過ぎでしょう”というのは現状認識が甘い。

たとえば、中国企業の時価総額が日本企業の時価総額を大幅に上回っている
現実は極めて重い。上海取引所の時価総額が東京を抜いた、と報道されて
いるが、これに深センと香港を加えると、すでに東京の倍以上になっているのだ。

中国に追いつかれてきたと思っていたら、アッという間に追い抜かれ、
どんどん背中が小さくなっているのである。

個々の中国企業の“実力”は、まだまだ日本企業より下だ。それでも時下総額が
逆転するのは、投資家が中国企業の価値が今後も上がると見込んで株を買うからだ。

つまり、時価総額の差は将来の企業価値の差だと考えなければならない
(もちろん投資家が常に正しいかは別問題だが)。
そして、時価総額の逆転が重大なのは、これが“武器”として使えるからである。

たとえば、時価総額の高いほうが低いほうを株式交換で買収することは簡単だ。
中国移動(時下18兆円)がNTTドコモ(同6兆円)を、中国工商銀行が日本の
メガバンクを買収することは、その気になれば難しくないのである。

それが起きないのは、日本企業に成長性が無く魅力的な買収対策ではないからで、
これまた喜べない話である。

中国の富が日本よりはるかに大きくなってしまったという今回の危機は、
日本が過去に経験した元寇、黒船到来、第二次世界大戦敗戦、日本貿易
摩擦、プラザ合意後の急激な円高などと違って、物理的に見える危機ではない。

だから日本人にあまり危機感がないのだが、経済の仕組みがわかる人間なら、
これがいかに決定的な敗北か、異論をはさむ余地はないだろう。

開国か攘夷かで国論を二分した黒船到来に匹敵する「国難」に直面しても、
空理VS空論、あるいは広告代理店のにわか仕込みの作文マニフェスト合戦、
といった風情の総選挙しかできない日本の未来は暗い。


■日本バッシングは、むしろありがたかった

しかしながら、いったん危機を正面から認識すれば、日本人は奮起して
立ち上がる十分な資格を持っている。歴史を振り返り、日本人の“棚卸し”
をしてみればわかる。

日本人は外国からのさまざまな圧力に接し、幾度となく進取の精神を発揮してきた。
たとえば、飛鳥時代~奈良時代には渡来人の文化を応用して藤原宮や平城京を造った。
また、ポルトガル人が種子島に鉄砲を伝えたのは1543年だが、
1600年の関ヶ原の戦い当時には、日本が鉄砲の保有数でヨーロッパ全体を上回っていた。

鉄砲伝来からわずか50年で、日本はヨーロッパよりも工業化が進んで世界最強の
武器保有国になっていたのである。

幕末から明治維新にかけては、20代・30代の若い人たちが中心となって改革を進め、
西欧列強に気後れすることなく世界に打って出た。
植民地や王制のままだったアジアで、日本だけが西欧文明を取り込んで近代化に成功した。

大事な点は、そうした偉人たちを輩出したのが、いずれも外国からの強い圧力を
受けた時代だったことだ。もっと言えば、日本人は屈辱をはね返して伸びてきた。
外圧を受けないと動かない特質を持っているのかもしれない。

つまり、これまで日本字は、窮地に陥ってもくじけたことがない。
むしろ窮地に陥るたびに強くなってきたのだ。

ところが、バブル崩壊後の「失われた10年(もしくは15年、あるいは20年)」は、
日本人の染色体まで変えてしまったように見える。進取の精神は消え失せ、
内向き・下向き・後ろ向きになった。

「草食系男子」(協調性が高く、家庭的で優しいが、恋愛と所有に積極的でないタイプ)と
呼ばれている若者たちは、仕事においても欲望や野心が乏しい。
彼らは明るいニュースが何もない時代に成長し、暗鬱とした世相の中で、
ファミコンやプレステをやりながら巣ごもり的に育ったから無理もないのだが、
そういう若者の増殖が、日本の衰退に拍車をかけていることは間違いない。


■こんな時代だからこそ政治の出番だ

残念ながら、日本人の“棚卸し”をしてみると、只今現在の“在庫”には、
正直ロクなものがない。能力、気力、体力、すべての面で、過去2000年間の
難局で示した日本人の姿が見えてこない。

しかし、それでは困るのだ。私は、こんな時こそ政治に期待すべきだと思う。
21世紀の経済戦争に勝つためには、まずは中央集権の統治機構を変える
ところから始め、徹底的に国を造り変える必要があるからだ。

そうでなければ、優秀な日本企業から順に海外に出て行くことになる。
そして優秀な企業ほど、日本人ではなく外国人を雇いたがるだろう。
好むと好まざるとにかかわらず、それがグローバル経済の鉄則である。

そもそも、これから人口が減り始める日本では、マーケットも縮小するの
だから、企業は海外に出て勝負しなければ生き残れない。

自動車やエレクトロニクスばかりではない。すでにユニ・チャームは、
女性も赤ちゃんも減り続ける日本国内市場の将来は暗いとみて、主力の
生理用品は東南アジアや中国などをターゲットにしている。インドネシアと
タイでは巨人P&G(プロクター&ギャンブル)を凌駕する大成功を収めている。

だからこそ、ここは政治の出番なのだ。日本を土台から造り直し、企業が発展
できる環境と、世界に打って出て戦える人材を育てる仕組みを整えなければ、
日本の衰退を止めることはできない。「老後の安心」が争点の政権交代では
日本人は幸福にはなれない。過去の貯金で細々と生きていけるほど、日本に
余力はない。改革を実現する突然異変のような優れたリーダーが、突如、
日本に登場することを祈るメサイア待望論はやや消極的だが、今回の総選挙後に
予想される政界再編劇の中で、一縷の望みを託してみたい。


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