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【2】『大前研一の提言!ネット最新潮流 ツイッター、超一品.com』

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【2】『大前研一の提言!ネット最新潮流 ツイッター、超一品.com』
    ※週刊ポスト 7月31日号に記載されたものを編集したものです
   (編集:松戸)
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 インターネットの「つぶやき」ブログサービス「ツイッター(Twitter)」
のユーザーが、日本を含め世界中で急増している。
ツイッターとは、ブログとチャットとSNSを足して3で割ったような
コミュニケーションツールだ。

2006年夏にアメリカで誕生し、日本語版は08年4月からサービスを開始した。
先行しているアメリカでは、オバマ大統領をはじめとする政治家や芸能人、
メディアなどが広く利用している。最近は、大統領選挙をめぐるデモが
起きて情報統制が敷かれているイランで、改革派の若者たちがツイッター
を利用して映像を含む情報を世界に発信し続け、大いに注目を集めた。

ツイッターは、言論の自由や報道の自由がない環境下で、内情や自分の
安否を外部に知らせるために使える貴重なツールなのである。

そういうツイッターの使い方は、もともと創業者たちが考えたものとは
全く違う方向に行っている。おそらく今後もユーザーが新しい用途を見い
だして、今やCNNにも匹敵するメディアとなった動画共有サイトのユーチュ
ーブ(YouTube)と同様に、政府による抑圧や規制が最も難しいチャンネル
の一つになるだろう。

■選択肢が増えると選択しなくなる

このようにインターネットではブログやSNSなどのコミュニケーション
ツールが多様化しているわけだが、その一方で、いま爆発的に伸びている
のがeコマースだ。サブプライムローン問題に端を発した世界不況にも
かかわらず、というか、そのために食事や娯楽などの消費を家庭で完結
させる「巣ごもり消費」の傾向が強まっていることもあって、世界的に
売り上げが増加しているのだ。

日本でも、これまで消費者が商品を選ぶ時は、モノ情報誌を参考にしたり、
知識のある友達や近くの店の店員に聞いたりしていた。
しかし、今やインターネットでたいがいのことは調べがつく。
いろいろなサイトに投稿されているユーザーの「口コミ」も大いに参考と
なる(ただし、その内容は吟味が必要だが)。

たとえば「価格.com」のようなサイトを見れば、類似商品の「売れ筋ラン
キング」や「満足度ランキング」が即座にわかる。それで比較検討して
買う商品を決めたら「価格の安い順」にショップも教えてくれるので、
その中から好きな店を選んで購入する、ということが簡単にできるように
なった。

つまり、消費者の購買行動に“知的な吟味”が加わるようになり、今まで
販売側やメーカー側の人たちが握っていた購買行動の主導権が、消費者側に
移ったのである。
賢い消費者がみんなで“武装”して「集団知」を創り出し、それに基づいて
最終的な判断をするようになったのである。

今年は、私の暦でいえば、A.G.25年(※)だが、eコマースの発達によって
購買行動の主導権が消費者に移ったのは、ツイッターなどのコミュニケー
ションツールの多様化と並んで革命的な変化だと思う。

しかも、そういう賢い消費者たちがサイバースペースで実際に財布を預けて
いる店、すなわちクレジットカード番号などを登録している店は数件に限ら
れることが多い。みんな、あちこちの店に個人情報を教えることをためらい、
信用できる店や気に入った店のリピーターになる傾向が強いのである。

かくいう私自身がそうだ。その中で最近、私が一番楽しみにしている買い物
サイトは「超一品.com」(www.choippin.com)である。このサイトが面白い
のは「1日1品」しか売らないことである。ワインも1日1本、かなりの掘り出し
物を推奨してくる。価格が割安で、なるほど選りすぐりの品だ、と納得して
しまうような薀蓄も書いてあるから、ついつい買いたくなる。

たとえば私は梅干には自分なりのこだわりがあるが、ある朝「超一品.com」を
開いたら、実に旨そうな梅干が出ていた。私が即座に注文したところ、2日後
に届いたその梅干は、予想以上に旨かった。それから私は毎日欠かさず
「超一品.com」をチェックするようになったのである。

「超一品.com」のコンセプトは、うまいところをついていると思う。
なぜなら、今やeコマースの世界は百花繚乱で、元禄時代のような爛熟した
状況になってきているが、楽天市場やアマゾンなどの“百貨店サイト”で
買い物をしようとすると、商品が豊富すぎて選ぶのが面倒になるからだ。

人々は「選択肢が増えると選択しなくなる」のである。加えて、すでに家の
中にモノがあふれている日本人が新たに欲しくなるのは、その道のプロや
専門家、趣味思考の合う友達が薦めるモノぐらい、という時代になっている。

そのニーズに応えたサイトのひとつが「超一品.com」だといえるだろう。
そんなサイバー社会では、より根本的な変化が起きつつある。
それについては次回に詳述したい。


※A.G.25年/アフター・ゲイツ25年。マイクロソフト『ウィンドウズ』の
 バージョン1が生まれた1985年を元年とすると今年は25年目にあたる。
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