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大前研一塾長 最新発言


 ◆「2008年金融テロ」の衝撃~2009年の世界経済 (THE212009年1月号)

   ○戦争でも起きないかぎり米国経済は早期回復しない

 ”アメリカは、GDPの約七割が個人消費で、その個人消費の半分が住宅
 関連である。住宅が売れると、カーテンや冷蔵庫やテレビなども合わせて
 売れる。まさに、これまでアメリカ経済を駆動してきたのは住宅だったの
 だ。そして、住宅が売れることによってアメリカの景気はよくなり、その
 結果、原油の価格が上がってアラブ諸国がい、中国をはじめとする新興国
 も輸出が増え、もちろん日本も恩恵を受けてきたのである。

 ところが、住宅が動かず、当面アメリカの個人消費がよくなる材料が何もない
のだから、世界経済の低迷もまだまだ続くといわざるを得ない。

 それでは、アメリカの景気を浮揚させる策はないのだろうか。

 一部の学者は、一九二九年の大恐慌後にフランクリン・ルーズベルト大統領が
行なったニューディール政策にった新ニューディール政策の必要性を主張してい
るようだが、たとえばオバマのいうように貧困層に千ドル程度配ったところで、
それが消費に回る可能性は少ないし、その程度でははっきりいって焼け石に水だ。
「ヘリコプター・ベン」の異名をとるバーナンキFRB議長の持論のように、空
から無尽蔵にお金をばら撒けば、さすがに消費は増えるだろうが、その代わり国
民は勤労意欲を失うし、その後に必ずくるハイパーインフレも避けられない。

 また、TVAダム建設のような公共事業も、歴史的に検証すると〇・五%程度
の景気浮揚効果しかないことがわかっている。仮に千億円を公共事業に使っても、
せいぜい五億円分くらいしか景気への波及効果はないのだから、これも意味があ
る対策とはいえない。

 この百年間の反省としては、財政投融資、公共工事、国営化などの成功例は、
少なくとも先進国では皆無なのだ。さすがに二〇〇八年十一月十五日に、アメリ
カに集まったG20の指導者のなかからは新・ニューディール(この言葉自体は
国連の事務総長のもの)を提唱する人は現われなかった。

 公共事業をやるくらいなら、そのお金で国策のベンチャーファンドをつくって
若い起業家を支援するほうが、まだましだ。それとて、第二のマイクロソフトや
グーグルが育つまでに十年はかかるだろう。

 結論をいうと、戦争でも起こさないかぎり、アメリカ、および世界経済を短期
間で立ち直らせる方法はないのである。

 ということは、今後ドルが強くなる理由もないということだ。それどころか、
アメリカ政府は世界中のドルを集めて流動性を確保する仕掛けもつくらず、金融
機関などの不良債権買い取りや、二十五万ドルまでの預金保証を約束する法律を
通してしまった。ところが、現在、預金保険機構には四兆円程度しかないのだか
ら、新たにドルや米国債を刷らざるを得ないだろう。そうすれば、ドルの価値は
ますます低下することになる。
 すると、次に何が起こるか。一つの可能性として、アメリカ国民が弱いドルに
見切りをつけ、金融資産をいっせいにユーロにシフトしはじめるというのが考え
られる。これを食い止めるためには、ドルの金利をかなり上げなければならない
が、いまやアメリカにはそれだけの力は残っていまい。

 こうなると、いよいよ私が『新・資本論』(東洋経済新報社)に書いたように、
大西洋を挟んでドルとユーロが基軸通貨の覇権を争う「アトランチックの戦い」が
することになる。そして、現状をみるかぎり、アメリカはかなり厳しい結果を覚悟
しなければならないだろう。” 


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