アレキサンダ−大王(古代地中海世界) 前356年〜323年
第五回目は、古代世界の大英雄、アレキサンダー大王の偉業と、
彼の資質の欠陥について考察してみます。
∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠
第五回 〜自己制御力〜
アレキサンダ−大王(古代地中海世界) 前356年〜323年
∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠
トランプの中の4つのキングには、実在のモデルがいる
ということをご存知でしょうか?
それは、カール大帝、ダビデ王、この連載でも取り上げたカエサル、
そして、アレキサンダー大王です。
これは、この4人が、ヨーロッパ(地中海世界)の歴史の中でも
抜きん出た存在として見られている証拠ではないでしょうか。
そのうちの一人、アレキサンダー大王は、ギリシアのマケドニアを
母国とし、ペルシアからさらに東、遥かインドまで遠征を行い、
当時の地中海世界で知られていた地図の範囲の大半を征服する
という、その時代においては、人知を超えた存在でありました。
また、独創的な戦術により、4〜5万の兵力で、
その10倍におよぶペルシア軍を打ち破るなど、近代の軍人が、
その戦術を研究対象とするほどの軍事的天才でもあります。
父が暗殺されたために、彼は若くしてマケドニアの王に
即位することになりました。そのとき、彼は弱冠20歳。
そして25歳でペルシアを征服してしまいました。
当時のペルシアは、現在のトルコやエジプトのあたりから
インダス川の周辺までを支配する一大帝国です。
アレキサンダーは現在のイラクの地で、敵である
ペルシア王ダレイオス3世を破り、ペルシア帝国を
事実上の崩壊に追い込むと、その後も東征を続け、
実に10年間に及ぶ遠征を行ったのでした。
しかし、その遠征の途中、彼は33歳の若さで
熱病におかされ、短い生涯を終えてしまったのです。
彼には深酒をするクセがあり、死の直前も連夜の宴会を開き、
酒を飲みつづけたため、体を壊してしまい、それがもとで、
病気にかかってしまったのでした。
イギリスの歴史家トインビーはこう言っています。
「彼が病気から回復していたら、インドを征服した後、
中国に攻め入り、旧世界全域を統一し、そして現代の
世界はアレキサンダー35世の支配下で安泰である」
しかしこれは決して実現することはありませんでした。
イタリアの高校の歴史教科書にはこう書かれているようです。
「指導者に求められる資質は、次の5つである。」
◇知力
◇説得力
◇肉体上の耐久力
◇自己制御の能力
◇持続する意思
アレキサンダーには独創的な戦術を生み出す「知力」や、
10年間も遠征を「持続させる意思」はありました。
しかし、彼にもっと「自己制御の能力」が
備わっていたとしたらどうだったでしょうか?
彼の死後、マケドニア王国は、征服した広大な領土を
効率的に統治するシステムを構築していなかったため、
混乱が生じてしまいます。
配下の武将達によって戦争が勃発し、領土はいくつかの
国に分裂してしまったのです。
さらに彼の妻子はこの戦争の中で殺されてしまいました。
もし彼に自分を制御する能力があれば、
トランプの4人のキングの一人ではなく、
もっと遥かに大きな存在になっていたかもしれません。
人生というものは、成功をつかみかけて油断した瞬間に、
大きな落とし穴にはまってしまうことがよくあります。
そこで求められるのが、自己制御の能力です。
それは、欲望を抑えることかもしれませんし、
健康を厳しく管理することかもしれません。
あるいは強い倫理観を持つことでもあるでしょう。
また、事業が上り調子にある中で、もし経営者の身に
何か起こってしまったらどうでしょうか。
その人自身に悔いは残らないでしょうか。
残された人々のことはどうなるのでしょうか。
もしあなたが真のアントレプレナーならば、
夢を実現させるために、自分を厳しく制御することを
当然のこととして考える必要があるかもしれません。
それは自分自身のためであると同時に、周りの人のためでも
あるといえるのではないでしょうか。
◎ここで、歴史は皆さんに問いかけます・・・。
是非、少し時間をとって考えてみてください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・あなたにもしものことがあった場合、どのような人に、
どのような影響が及ぶでしょうか?
・あなたが制御しなければならない自分の弱点は何ですか?
・あなたは、自分を制御することを当然と思えるために、
アレキサンダー大王から何を学びますか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
*参考文献:
・『アレクサンドロス大王 「世界征服者」の虚像と実像』
(森谷公俊、講談社選書メチエ)
・『大遠征 アレキサンダーの野望』
(マイケル・ウッド、ニュートンプレス)
・『痛快!ローマ学』(塩野七生、集英社インターナショナル)
この文章は大前研一のアタッカーズ・ビジネススクールが発行するメルマガ【情熱DNA】(まぐまぐ殿堂入り)にて配信した内容です。ご登録いただければ毎週水曜日、お手元に届きます。こちらから
彼の資質の欠陥について考察してみます。
∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠
第五回 〜自己制御力〜
アレキサンダ−大王(古代地中海世界) 前356年〜323年
∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠∠
トランプの中の4つのキングには、実在のモデルがいる
ということをご存知でしょうか?
それは、カール大帝、ダビデ王、この連載でも取り上げたカエサル、
そして、アレキサンダー大王です。
これは、この4人が、ヨーロッパ(地中海世界)の歴史の中でも
抜きん出た存在として見られている証拠ではないでしょうか。
そのうちの一人、アレキサンダー大王は、ギリシアのマケドニアを
母国とし、ペルシアからさらに東、遥かインドまで遠征を行い、
当時の地中海世界で知られていた地図の範囲の大半を征服する
という、その時代においては、人知を超えた存在でありました。
また、独創的な戦術により、4〜5万の兵力で、
その10倍におよぶペルシア軍を打ち破るなど、近代の軍人が、
その戦術を研究対象とするほどの軍事的天才でもあります。
父が暗殺されたために、彼は若くしてマケドニアの王に
即位することになりました。そのとき、彼は弱冠20歳。
そして25歳でペルシアを征服してしまいました。
当時のペルシアは、現在のトルコやエジプトのあたりから
インダス川の周辺までを支配する一大帝国です。
アレキサンダーは現在のイラクの地で、敵である
ペルシア王ダレイオス3世を破り、ペルシア帝国を
事実上の崩壊に追い込むと、その後も東征を続け、
実に10年間に及ぶ遠征を行ったのでした。
しかし、その遠征の途中、彼は33歳の若さで
熱病におかされ、短い生涯を終えてしまったのです。
彼には深酒をするクセがあり、死の直前も連夜の宴会を開き、
酒を飲みつづけたため、体を壊してしまい、それがもとで、
病気にかかってしまったのでした。
イギリスの歴史家トインビーはこう言っています。
「彼が病気から回復していたら、インドを征服した後、
中国に攻め入り、旧世界全域を統一し、そして現代の
世界はアレキサンダー35世の支配下で安泰である」
しかしこれは決して実現することはありませんでした。
イタリアの高校の歴史教科書にはこう書かれているようです。
「指導者に求められる資質は、次の5つである。」
◇知力
◇説得力
◇肉体上の耐久力
◇自己制御の能力
◇持続する意思
アレキサンダーには独創的な戦術を生み出す「知力」や、
10年間も遠征を「持続させる意思」はありました。
しかし、彼にもっと「自己制御の能力」が
備わっていたとしたらどうだったでしょうか?
彼の死後、マケドニア王国は、征服した広大な領土を
効率的に統治するシステムを構築していなかったため、
混乱が生じてしまいます。
配下の武将達によって戦争が勃発し、領土はいくつかの
国に分裂してしまったのです。
さらに彼の妻子はこの戦争の中で殺されてしまいました。
もし彼に自分を制御する能力があれば、
トランプの4人のキングの一人ではなく、
もっと遥かに大きな存在になっていたかもしれません。
人生というものは、成功をつかみかけて油断した瞬間に、
大きな落とし穴にはまってしまうことがよくあります。
そこで求められるのが、自己制御の能力です。
それは、欲望を抑えることかもしれませんし、
健康を厳しく管理することかもしれません。
あるいは強い倫理観を持つことでもあるでしょう。
また、事業が上り調子にある中で、もし経営者の身に
何か起こってしまったらどうでしょうか。
その人自身に悔いは残らないでしょうか。
残された人々のことはどうなるのでしょうか。
もしあなたが真のアントレプレナーならば、
夢を実現させるために、自分を厳しく制御することを
当然のこととして考える必要があるかもしれません。
それは自分自身のためであると同時に、周りの人のためでも
あるといえるのではないでしょうか。
◎ここで、歴史は皆さんに問いかけます・・・。
是非、少し時間をとって考えてみてください。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・あなたにもしものことがあった場合、どのような人に、
どのような影響が及ぶでしょうか?
・あなたが制御しなければならない自分の弱点は何ですか?
・あなたは、自分を制御することを当然と思えるために、
アレキサンダー大王から何を学びますか?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
*参考文献:
・『アレクサンドロス大王 「世界征服者」の虚像と実像』
(森谷公俊、講談社選書メチエ)
・『大遠征 アレキサンダーの野望』
(マイケル・ウッド、ニュートンプレス)
・『痛快!ローマ学』(塩野七生、集英社インターナショナル)
この文章は大前研一のアタッカーズ・ビジネススクールが発行するメルマガ【情熱DNA】(まぐまぐ殿堂入り)にて配信した内容です。ご登録いただければ毎週水曜日、お手元に届きます。こちらから

